新婚の旅に見上げし
セコイアを
四十年を経て共に見上ぐる ― 松江久志
【現代訳】
新婚の旅行で見上げたセンペルセコイアの高い樹木を、結婚後四十年を経て、再び一緒に見上げることのできる幸せ、ありがたさ。
心に咲く花 2025年83回 センペルセコイア
先日、伊勢神宮を参拝した帰り、「レッドヒル ヒーサーの森」を訪問する機会がありました。約一千品種、一万本以上もの花木や草花が四季折々に楽しむことができる「レッドヒル ヒーサーの森」。
紅葉を楽しむことのできる場所もあれば、ローズガーデンの薔薇の多彩な麗しさにも感激致しました。珍しい青紫色のシクラメンにも驚きました。晴天に恵まれ、花のある星に生まれた幸せを心から実感できた一日。
その中でも、スギ科セコイア属に分類されるセンペルセコイアに惹かれました。「世界で一番のっぽな木」として知られるセンペルセコイアは樹高百メートルを超えるものがカリフォルニア州のレッドウッド国立公園にあるそうです。「生きた化石」と呼ばれ、六千五百万年から二百万年頃までの地球に広く生えていたとのこと。「レッドヒル ヒーサーの森」には数多くのこのセンペルセコイアが植栽されていました。
思わず、詠まれている短歌がないか調べたところ、島根県松江市出身でカリフォルニア短歌会を主宰する松江久志さんの『花宇宙』という歌集にセンペルセコイアの歌が見つかりました。掲出歌もこの中の一首です。
単に「セコイア」とも称されるセンペルセコイア。作者の松江さんはアメリカで教師をしながら歌を詠み、退職後も現地で歌を詠み続けていらっしゃるそうです。
冬でも葉が落ちない、常緑の樹木。樹齢を重ねた高木の樹皮は太古のロマンを感じさせる趣があります。アメリカ先住民族の酋長に由来する名を持ち、樹齢二千年を超える個体もあるセンペルセコイア。晩秋から蕾ができ、春には開花をし、やがて球果(マツボックリのようなもの)が実るそうです。
天をめざし、まっすぐに伸びるセンペルセコイア。思いがけず、地球に暮らす大先輩の植物と出逢い、至福の一日でした。これからも、幾度となく「レッドヒル ヒーサーの森」を訪ね、さまざまな草花との出逢いを愉しみたいと思っております。すばらしい里山庭園を育み、運営くださっている皆様に心から敬意を表しつつ。
田中章義(たなか あきよし)さん
歌人・作家。静岡市生まれ。大学在学中に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞。2001年、国連WAFUNIF親善大使に就任。國學院大學「和歌講座」講師、ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授も務める。『世界で1000年生きている言葉』(PHP文庫)の他、歌集『天地(あめつち)のたから』(角川学芸出版)、『野口英世の母シカ』(白水社)など著書多数。
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