のどを潤すだけじゃない
再認識!お茶の「健やか力」
そのまま飲めば、無糖&ノンカロリー、
和洋中、どんな食事にももれなくマッチして、
しかも大切な栄養をバランスよく含んでいる──。
それが、日本が誇る健康飲料「お茶」です。
FFCテクノロジーはお茶の栽培現場でも活用され、
おいしく身体にいいお茶づくりに役立てられています。
今回は改めてお茶のもつ「健やか力」をご紹介します。
お茶に含まれる“体と心にやさしい”
4つの基本成分はコレ!
お茶には心身の健康を健やかに保つためのうれしい成分が数多く含まれています。
なかでも代表的な4つの成分に注目してみました。
カテキン
お茶に特有の渋昧をもたらす健康成分
【健やかポイント】
●悪玉コレステロールが抑制される
●活性酸素を取り除く抗酸化作用
●脂肪の吸収が穏やかに
●抗菌効果で虫歯予防に
●がん予防への期待も
活性酸素を取り除く!
お茶に含まれる成分として最近よくその名前を聞くのが、苦味や渋味成分である「カテキン」です。
カテキンは、健康成分として話題の「ポリフエノール(植物が自らを活性酸素から守るために作り出す天然成分で、何千という種類が存在する)」の一種。さまざまなお茶に含まれていますが、含有量が圧倒的に多いのが緑茶です。
さらにカテキンは日光を浴びて光合成をすることで増加するため、その成分は茶葉に集中しています。
今、世の中で注目を集めているカテキンの健康作用のひとつが「抗酸化作用」です。
老化現象や生活習慣病の原因として「ほかの物質を酸化させてしまう酸素=活性酸素」がクローズアップされています。私たちは呼吸によって大量の酸素を体内に取り入れて生きていますが、その過程で取り入れた酸素の約2%が活性酸素になるといわれています。活性酸素が増えすぎると正常な細胞や遺伝子まで酸化させ、傷つけてしまう。それが「活性酸素は万病の元」といわれるゆえんです。
そしてお茶の茶葉に含まれるカテキンにはその活性酸素を取り除き、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病といった生活習慣病の原因となる悪玉コレステロールや血圧上昇を抑制する作用のあることがわかっています。そして近年では発がん抑制作用によるがん予防への期待も高まっています。
また、カテキンは強力な「殺菌作用」も持っています。お寿司屋さんで出される濃い煎茶、これもカテキンの殺菌作用によって生の魚介を食べるがゆえに付きまとう食中毒を予防するためなのだそう。
ほかにもその殺菌作用で口内の虫歯菌の繁殖を抑えることによる虫歯や口臭の予防、糖質の吸収を抑制することで肥満予防、炎症の抑制作用による花粉症などのアレルギー症状の緩和などさまざまな健康作用が期待されています。
カフェイン
脳を目覚めさせ、気分も爽快に
【健やかポイント】
●覚醒作用で集中力アップ
●利尿作用でデトックス
●二日酔いにもおすすめ
●脂肪の燃焼を促してくれる
眠気スッキリ覚醒効果
カフェインといえばコーヒー、というイメージを持つ人が多いと思いますが、お茶の「健やか力」を支える健康成分としてのカフェインも見逃せません。
一般的に、緑茶には100mlあたり10~20mg程度のカフェインが含まれています。
カフェインの働きと聞いてすぐ思い浮かぶのは覚醒作用でしょう。脳内の中枢神経を興奮させることで眠気を防いだり、集中力がアップして作業効率を向上させたり、運動能力を向上させたりといった効果があります。また気分が爽快になる、リフレッシュできるという作用も。ビジネスマンが仕事の合間にお茶やコーヒーで一服するのには、こうした理由もあるのです。
逆に、夜に摂取し過ぎると眠れなくなったり、睡眠の質が下がったりすることも。健康成分とはいえ過剰摂取には注意が必要です。
利尿作用でデトックス
カフェインのもうひとつの作用に「利尿」が挙げられます。
お茶を飲みすぎるとトイレが近くなってくる―、そんな経験はありませんか。
それはカフェインに、体内の不要物をろ過して尿として排出する腎臓の血管を拡張して、その働きを促進する作用があるためです。
利尿作用によって体内の老廃物の排出が促進されるため、いわゆるデトックス効果やむくみの改善なども期待できます。
また、二日酔いのときにもお茶はおすすめ。水分補給と同時に飲酒によって体内に吸収されたアルコールをすみやかに尿として体外に排出できます。
さらにカフェインには、効率よく脂肪を燃焼させる作用や、胃液の分泌を促して消化を促進する作用などがあることもわかってきています。
テアニン
癒やしをもたらすアミノ酸は、お茶のうま昧となる成分
【健やかポイント】
●リラックスして緊張を緩和
●カフェインの働きをマイルドに
うま味と癒やしのアミノ酸
「テアニン」はダシのうま味成分として知られるグルタミン酸に似たアミノ酸の一種。やはり、お茶の“うま味”に関係しており、高級なお茶ほど多く含まれています。
お茶を飲むと“ほっこり”する、ホッとひと息つく、心が和むといった気持ちになりますよね。実はこうしたお茶のリラックス効果にもテアニンが関わっているのです。
テアニンには、副交感神経を優位にして、脳内の興奮している神経を落ち着かせる働きがあります。
リラックスしている状態のとき、私たちの脳にはアルファ波という脳波が出ています。そしてテアニンを摂取すると、このアルファ波が増えることもわかってきました。
このリラックス効果で、ストレスによる血圧や脈拍数の上昇を抑制する作用も期待されています。
前述しましたが、お茶には中枢神経を刺激して興奮させるカフェインが含まれています。でもその働きはコーヒーよりソフトですよね。なぜならテアニンがカフェインの働きを抑制しているからです。
お茶の健康成分のバランスを保ちながら心と体を癒やしてくれるテアニン、注目の成分です。
ビタミンC
水溶性のビタミンCはお茶で摂るのが効果的
【健やかポイント】
●抗酸化作用で生活習慣病の予防に
●免疫力向上で風邪の予防に
●シミやニキビを防ぐ
「C」は健康と美容の立役者
健康成分としてポピュラーなビタミンC。野菜などに含まれるビタミンCは熱に弱いといわれていますが、お茶のビタミンCは熱の影響を受けても壊れにくく、安定しているのが特徴です。
お茶、とくに煎茶はビタミンCが豊富で、レモンの315倍とも言われています。さらにビタミンCは水に溶けやすいため、お茶を飲むのは日常的な摂取手段として理に適っているといえるでしょう。
代表的な健康効果のひとつは免疫力の向上作用。これによってウイルスに対する抵抗力も高まるため風邪の予防に効果的です。
さらには疲労回復の効果も。体が疲れたりストレスが溜まったりすると大量発生する活性酸素を抑える抗酸化作用があるからです。
また、ビタミンCにはシミ・ソバカスの原因となるメラニン色素の過剰生成や定着を抑えて、肌を健康に保つ作用があると言われています。
さらに皮脂の分泌を抑えて炎症を抑制するさようもあるため、お肌のトラブル予防にも期待できます。
体に心にお肌のために、ビタミンC豊富なお茶はうれしいですね。
お茶と歴史と健康のこぼれ話
いつの時代もお茶は“健康飲料”だった
お茶が支えた「医薬の祖」
歴史をひも解けば、人々ははるか昔からお茶の「健やか力」を活用していたことがわかります。
「お茶を一服する」などといいますが、服とは「服用する=薬を飲む」の意味であり、これもお茶が古くから薬として用いられてきたことに由来する表現です。
例えば、お茶の発祥地といわれる中国では、歴史上にお茶が登場するのは、今から約5,000年前。
薬祖神(医薬の神様)や農業の祖として信仰を集めた古代中国の伝説上の三皇のひとり「神農」にまつわるエピソードだといわれています。
神農は植物の薬効を調べるために自分の身体を犠牲にして数多くの草木を試食しました。当然、体によくない成分を持つ植物もあります。そのため神農は1日に70回も食中毒になりました。そしてその際、解毒薬として用いたのが茶の葉だったとされています。
神農の命を救い、漢方医薬の発展を支えたのがお茶だったのです。
宿酔の将軍もお茶を飲んだ
日本にお茶が伝わったのは奈良~平安時代、遣唐使や留学僧によるものと考えられています。
その後、鎌倉時代には中国(当時は宋)にわたって禅宗を学んだ栄西禅師が、帰国後に中国で見聞きした飲茶を広め、茶の効用を説いた『喫茶養生記』を著しました。
茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり(お茶は人の命を養う仙薬であり、長寿の秘訣でもある)。
栄西はその書のなかで、お茶の効用をこう記しています。
また鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には、栄西が酒好きの将軍・源実朝のもとに、二日酔い解消のための茶とともに、この書を献上したとも記されています。
鎌倉時代にはすでに、お茶が二日酔いの良薬として活用されていたのですね。
心に喝!修行のお供にもお茶
このように禅宗とお茶のかかわりは古く、深いものがあります。禅宗には姿勢を正して坐った状態で精神統一を行う坐禅という修行があるのはご存知ですね。
そして修行僧が座禅をする際に、お茶を飲むことが感覚を研ぎ澄まし、眠気を覚ます助けになっていたといいます。
お茶の持つ覚醒作用が、悟りを聞く厳しい修行を支えていたのかもしれません。
こうして古くから“健康飲料”として重用されてきたお茶。私たちも、おいしく飲んで「健やか」を手に入れましょう。
2017年7月発刊『BOSCO 19号』掲載 特集
取材・文/柳沢敬法