水の技術で環境も社会も変えていく
FFC&フィランソがSDGsでできること
みんなで力を合わせて地球の自然や資源を守り、すべての命が生き生きと輝ける世界をつくろうという国際プロジェクト「SDGs(持続可能な開発目標)」。
今回のゲストは、そのSDGs達成への活動を通して環境や社会の問題に取り組まれている東京都市大学大学院教授の佐藤真久先生です。
早春の鈴鹿の森庭園にて、赤塚植物園グループの企業理念やFFCテクノロジー、フィランソ活動がSDGsにどう貢献できるのかなどをお聞きしました。
『BOSCO TALK』
赤塚耕一 ×佐藤真久さん(東京都市大学大学院教授)
2023年6月発行『filanso style 37号』掲載
水の問題への関心が結んだ「縁」
― まず、佐藤先生と赤塚植物園グループとの〝出会い〟をお聞かせください。
赤塚 佐藤先生は以前からパイロゲンをご存じだったと伺いました。
佐藤 はい。母がパイロゲンを飲んでいたので、私もパイロゲンのことは知っていました。その後、フィランソリーダー会員の方からシャクナゲの苗をいただいたことがきっかけで、赤塚植物園グループが取り組んでいる水や土の研究、FFCの技術を知りました。
赤塚 フィランソのご縁のおかげで、私どもも先生とのご縁をいただけたことに感謝しております。
佐藤 実は私、2年ほど前に体調をくずし、忙しさもあって大変な思いをしていたとき、リーダーさんから「これを使ってみては?」と『FFCスーパーエッセンス』をいただいたんです。さっそく試してみたら、なんと2日くらいで変わってきたんです。「こんなことがあるの?」って、もう驚きですよ。
赤塚 先生ご自身でもFFCを使った実験をされたそうですね。
佐藤 はい。リーダーさんと一緒に、水道水とパイロゲン希釈水に鉄くぎを入れて酸化や腐食を比較する実験を試しました。最初は疑心暗鬼な気持ちもあったのですが、FFCの水に入れると本当にくぎがさびないんですよね。切り花が元気に咲き続けている姿も見ました。こうした実証結果を目の当たりにしたことで、「FFCの水の力とその技術」に高い関心を持つようになりました。
赤塚 FFCの技術に関心を持っていただき、ありがとうございます。そして何よりも、SDGsや環境問題への取り組みという共通点があったことが、ご縁につながったのだと思います。
佐藤 はい。私自身、環境科学は専門ですし、環境分野の国際協力にも長く携わってきました。ですから植物や水などの分野にはすごく関心があります。また、ガーデニングが盛んなイギリスに長く留学していたこともあって園芸にも興味を持っています。そうした私のバックグラウンドも赤塚さんとの大きな接点になりました。
赤塚 そうしたご縁で今回、先生が監修された『未来の授業SDGsパートナーシップBOOK』という本に弊社の取り組みを掲載していただけたのは、本当にありがたいことだと感謝しております。
佐藤 豊かな水に恵まれ、水があるのが当たり前の日本は、それゆえ水の問題に対する〝感度〟がすごく低い国だと思っています。でも、水資源の確保は、水の質、水の量、水へのアクセスの点で、日本がこれから取り組むべき社会課題のひとつです。そこでこの本をつくるにあたり、水の問題に真摯に取り組んでいる企業を探していたところ、赤塚さんとつながりました。
赤塚 まさに〝引き寄せられるように〟という感じでしたね。
FFCならSDGsの達成に寄与できる
― SDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されたのが2015年。赤塚植物園グループはいつごろからSDGsを意識されていたのでしょうか。
赤塚 国連の採択から2年後ぐらいですね。当時、日本ではSDGsに対する意識や取り組みへの動きは鈍く、今ほど社会には浸透していませんでしたが、あるフィランソリーダーさんを通じてSDGsのことを知り、すぐに「これだ」と思ったんです。FFCの技術があれば、SDGsの掲げる17の目標すべてに寄与できる、と。それからは、セミナーなどで会員の皆さんに「一緒にFFCでSDGsを達成しましょう」と必ずお話ししていました。
佐藤 日本だけでなく世界でもほとんど浸透していない時期に、先んじてSDGsに着目できる先進的な感覚はさすがですね。
赤塚 それもFFCがあればこそです。例えば、「海の豊かさを守る」という目標達成には漁獲量の制限などが一般的ですが、FFCを活用すれば、海の生態系そのものを蘇らせることができます。FFCはSDGsが掲げたゴールのさらに先まで実現できる技術なんです。
佐藤 さらに私がすごいと思うのは、赤塚植物園グループではFFCによるSDGs達成の取り組みが「事業の一部」になっている点です。多くの企業は、「自分たちの本業は利益のため。本業ではない環境や社会への貢献は、利益が出て余裕があるときにやるもの」と考えがちです。でも赤塚植物園グループは、「本業」である企業の経営を通して、それがそのまま環境や社会経済への貢献につながり、さらに企業のファンをつくっているところに大きな魅力を感じます。
赤塚 はい。経済活動と環境改善を両立できるのがFFCの最大のメリットです。
佐藤 こうした自然資本を大切にし、人と社会を大切にする経済活動は、これからの社会が目指すべき企業経営の理想の形です。赤塚植物園グループは創業60年を迎えたと聞きましたが、ここまで長く持続できている理由はそうした企業姿勢にもあるのでしょうね。
赤塚 ありがとうございます。
人と自然の善循環を追求する企業理念と、
志を同じくするフィランソの地道な活動。
FFCを介したパートナーシップは
SDGsに大きく貢献できると確信しています。
キーワードは「善循環」&「同時解決」
― 赤塚植物園グループでは、具体的にどのような形でSDGsに取り組んでいるのでしょうか。
赤塚 ひとつには、今回先生にもご覧いただいた「鈴鹿の森庭園」といった弊社のガーデンを活用して多くの方々に自然と触れ合っていただく活動です。また、「レッドヒル ヒーサーの森」で親子写生大会を開催したり、地元の小学校にチューリップの球根をお配りするレインボープレゼントの取り組みを行うなど、20年以上前から子どもたちに自然を学ぶ機会を提供し続けています。
もうひとつは、やはりFFCテクノロジーの普及ですね。あらゆる産業分野でFFCを活用することで環境、健康、経済すべてに好影響が生まれ、それが善循環していきます。さらに、このFFCを広めてくださるフィランソ会員の方々には「社会に貢献している」という大きなやりがいや収入を得ていただける。会員の方々の地道な活動によってFFCが広まることで、人も自然もすべてが豊かになれる。SDGsが達成できるんです。
佐藤 そのとおりですね。社長がおっしゃった「善循環」はSDGsのキーワードと言えるでしょう。やはり赤塚さんは感度が高いですね(笑)。
実はもうひとつ、私が考えるSDGsのキーワードがあります。それは「同時解決」というもの。今、世界は2つの大きな問題を抱えていると言われています。ひとつは貧困や社会的排除(医療や教育が受けられないなど)といった「人と人」の問題。もうひとつは地球環境問題、つまり「人と自然」の問題です。このふたつは密接に連動しています。例えば、スラム街などがある場所は自然環境が悪化するし、逆に環境が悪いところに貧しい人たちが追いやられるという現状もあるわけです。
赤塚 ふたつの問題を切り離して別々に考えていては解決できない。だから「同時解決」という考え方が重要なのですね。
佐藤 おっしゃるとおりです。国別のSDGs達成度ランキングを見ると、日本は年々順位が落ちてきているのですが、その理由のひとつには「縦割り発想による分断」があるのではないかと私は考えています。
赤塚 分断、ですか。
佐藤 日本ではいまだに縦割り発想が根強く、「環境だけよければ」「社会だけよければ」「経済さえ豊かになれば」という分断した考え方が多い。でも今話をしたように、それらがすべて連動していると考えれば、「環境も社会も健康も経済も、みんな一緒によくなる」でなければいけないんです。
赤塚植物園グループが素晴らしいのは、赤塚充良会長が創業された当初からすでに分断ではなく、「善循環」と「同時解決」の意識を持っていたという点です。そして、今も社長をはじめ、会長、社員の方、フィランソ会員の方々― みなさんが同じ意識を共有し、実践していらっしゃる。そこにすごく魅力を感じています。
赤塚 ある意味、赤塚植物園グループにはSDGsの実現に不可欠なパートナーシップ(多様な人たちとの協力関係)がしっかり構築されているということだと思います。弊社に関わってくださるすべての方は、同じ思いと信頼関係で結ばれた誰一人欠かせない大切なパートナーだと思っています。
願うのは「生きとし生けるものすべて」の繁栄
― SDGsの達成に向けたフィランソの関わりについてお聞かせください。
赤塚 人と人、人と自然。環境、社会、健康、経済のすべてを善循環させ、同時解決していく。そう考えたとき、SDGsの実現にフィランソはとても理想的だと考えています。フィランソの語源はギリシャ語の「フィランソロピー(人類愛)」です。でもFFCの技術を持っている弊社の「フィランソ」には、人類だけでなく、動物や植物、微生物など、「地球上に生きとし生けるすべてのものの繁栄を願う想い」という意味があります。
佐藤 そうでしたか。SDGsの達成には多様性を受け入れるというダイバーシティの発想が求められているのですが、赤塚植物園グループの活動には最初からその発想が当たり前のこととして根付いているのですね。
赤塚 はい。私たちは「一人の健康から地球の未来まで」を企業理念としてかかげています。「SDGsだから多様性を、ダイバーシティを」などと特別に意識せず、当然のこととしてやってきました。
佐藤 それはやはり、FFCが「水を変える技術」であることが大きいと思います。すべての命の源である水に向き合っているからこそ、何者も平等にその恩恵を得られるべきという考え方が生まれてくるのでしょう。
赤塚 佐藤先生は、会長の著書『人と地球よ、蘇れ!』にある「儲かるとか儲からないとか、そんな小さな問題ではありません。地球環境を救うために世界中の人たちが力を合わせていかなければならないのです」という言葉に感銘を受けたとお聞きしました。
佐藤 自然資本を基礎とした善循環という社会や経済のあり方の本質を深く理解されている、実に的を射たメッセージですよね。会長のこうした信念に共感共鳴できる高い感度や感性を持ったフィランソ会員の方々との強いパートナーシップこそ、赤塚植物園グループのいちばんの強みではないでしょうか。
赤塚 そのとおりです。会員のみなさんは同じ志を土台にして、それぞれにFFCで実現できる理想の世の中を思い描いて活動されています。そこには分断などないんです。
佐藤 世の中の企業の多くが縦方向の上意下達のコミュニケーションであるのに対し、赤塚とフィランソ会員の方々との関係は、横方向に拡散する共有という形なのが素晴らしいですね。
赤塚 ありがとうございます。ですから会員のみなさんとお話しすると、それぞれ活動の形は違っても、根底にある思いがすべてリンクしてプラスに広がっていきます。こうした意識の高いフィランソの存在は、まさに赤塚植物園グループの〝宝〟です。
分断された経済重視の日本の社会で、
自然資源を土台にした経営をずっと続けてきた。
一貫してぶれないその精神が
赤塚植物園グループ&フィランソの強みだと思います。
SDGs意識の高さで企業が選ばれる時代に
― 今回、学校教材にも使われる『SDGsパートナーシップBOOK』に赤塚植物園グループの取り組みが取り上げられました。その意味をお聞かせください。
赤塚 はい。会長が「将来、FFCの技術が世界中の子どもたちの教科書に載るのが夢」と言っていたように、この本が小中高生という若い人たちに届けられることが重要だと思っています。これからの社会を担う世代にSDGsを通じて、その先にあるFFCにも関心を持ってもらう。SDGsを介して、若い世代と弊社がつながるきっかけにもなる。そのための場をいただけたことには大きな意味があり、今回の掲載は非常にありがたいことです。
この本を教材にして学んだ子どもたちが大人になるころには、SDGsという考え方が世の中のスタンダードになっているでしょう。そのなれば彼らが就職先を選ぶときには、SDGsの意識の有無が大きなポイントになっていくはずです。
佐藤 若い人たちの企業を見る目も厳しくなりますからね。私としては、この本は子どもや教育関係者だけでなく、企業の人たちにも社内研修などでぜひ読んでほしいんです。事実、この本は日本の小中高校3万5千校に配布されただけでなく、企業や自治体の研修でも活用されつつあります。先にも言いましたが、これからの企業経営には自然資本を基礎にした社会経済という考え方が必須になっていくのですから。
赤塚 そうですね。その点、この本に掲載されているSDGs意識の高い企業もまた、同じ志を持つパートナーと言えます。将来的には、そうした企業同士が協力し合って問題解決に向き合うという動きにしていけるといいですね。
佐藤 それはすごく大事ですね。これからは企業同士が連携し、手を組んで善循環を追求していく時代です。お互いが固有の能力や技術を活用し合いながら大きな流れをつくり出していくという姿勢はSDGsの達成に不可欠だと思います。
赤塚 多くの企業がさまざまな優れた技術を持っていて、それぞれがその技術を活かしてSDGsの実現に取り組んでいます。その積み重ねによって日本の、世界の、地球の環境や社会がよくなっていく。だから私たちは、フィランソ会員の方々とともにFFCを広く普及させることに全力を尽くす。それがこの技術を託された私たちが果たすべき使命だと考えています。
佐藤 そのぶれない精神こそ、これからの企業のあるべき姿だと思います。
赤塚 そう言っていただけると励みになります。本日はありがとうございました。
佐藤真久(さとう まさひさ)さん
東京都出身。東京都市大学大学院 環境情報学研究科教授
筑波大学第二学群生物学類卒業、同大学院修士課程環境科学研究科修了。英国サルフォード大学にてPh.D取得(天然資源管理)。地球環境戦略研究機関(IGES)の第1・2期戦略研究プロジェクト研究員、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の国際教育協力シニア・プログラム・スペシャリストを経て、現職。現在、UNESCO Chair(責任ある生活とライフスタイル)国際理事会理事、IGESシニア・フェローなどを務める。
取材・文/柳沢敬法 撮影/野呂英成