心に咲く花 11回 楓
あらしふく 御室(みむろ)の山の もみぢばは 竜田の川の 錦なりけり― 能因法師 【現代訳】 山風が吹き散らす「御室山」の紅葉が竜田川の水面を彩っている。 その彩りの美しさ、見事さ。まるで錦を織り成したようではないか。 …
あらしふく 御室(みむろ)の山の もみぢばは 竜田の川の 錦なりけり― 能因法師 【現代訳】 山風が吹き散らす「御室山」の紅葉が竜田川の水面を彩っている。 その彩りの美しさ、見事さ。まるで錦を織り成したようではないか。 …
秋をおきて 時こそ有りけれ 菊の花 うつろふからに 色のまされば― 平貞文 【現代訳】 秋を過ぎても盛りの時期がある菊の花。色が移ろいゆくほどに味わい深く、美しさがさらに優ってゆくのだから。 心に咲く花 第10回 菊 古…
曼珠沙華 咲く野の日暮れは 何かなしに 狐が出ると おもふ大人の今も― 木下利玄 【現代訳】 彼岸花とも呼ばれる「曼珠沙華」が咲いている野の夕暮れは、何となく狐が出ると思われるよ、大人になった今でも。 心に咲く花 第9回…
我が里に 今咲く花の をみなへし 堪(あ)へぬ心に なほ恋ひにけり― 『万葉集』詠み人知らず 【現代訳】 私の里に咲いているつつましやかで麗しいおみなえし。 そんな花のように可憐なあの人に会いたくて、堪え難いまでに恋しく…
夏深み 入江のはちす さきにけり 浪にうたひて すぐる舟人 ― 藤原(九条)良経 【現代訳】 夏が深まりゆく入江には蓮の花が咲いています。 水上に大きな多弁の花を咲かせる蓮の花。あまりにも美しいその姿に、舟を漕ぐ人も思わ…
道ばたの 空地に群るる つゆ草の 澄みたる藍は 草にまぎれず ― 芹澤たみ 【現代訳】 道端の空地に藍色のつゆ草が群れるように咲いています。 澄みわたった美しいつゆ草の藍色。小さな花ではあっても決して草に紛れることなく、…
道のべに どくだみの花 かすかにて 咲きあることを われは忘れず ― 斎藤茂吉 【現代訳】 道端に小さなどくだみの花が咲いています。 どんなに小さくても、微(かす)かな存在ではあっても、この大地に咲いてくれているどくだみ…
故郷は 庭もまがきも 荒れゆけど 心とどまる つぼすみれかな ― 慈円 【現代訳】 ふるさとは庭も垣根もすっかり荒れてしまったけれども、強く心に惹かれるすみれであることよ。 心に咲く花 第4回 すみれ この春は小さなすみ…
たんぽぽの 綿毛を追ひて 遊びたる 遥かなる日の 野辺なつかしき ― 皇后陛下 【現代訳】 たんぽぽの綿毛を追いかけながら、こどもたちと楽しく遊んだ、遥かなあの春の日。 あの野辺が今、とてもなつかしく感じられます。 心に…
ヒヤシンス 薄紫に 咲きにけり はじめて心 ふるひそめし日 ― 北原白秋 【現代訳】 薄紫色にヒヤシンスが咲きました。 初めて誰かを好きになって、心がふるえ始めたあの日に。 心に咲く花 第2回 ヒヤシンス 早春を代表する…