心に咲く花 51回 三椏(みつまた)
時すぎて 過ぎたる時は 還(かえ)らねど みつまたの黄の 花を見に来よ ― 成瀬有 【現代訳】 時は流れ去り、過ぎ去った時間は決して還(かえ)ることはないけれど、『万葉集』の時代から詠まれ、「永遠の愛」や「肉親の絆」と…
時すぎて 過ぎたる時は 還(かえ)らねど みつまたの黄の 花を見に来よ ― 成瀬有 【現代訳】 時は流れ去り、過ぎ去った時間は決して還(かえ)ることはないけれど、『万葉集』の時代から詠まれ、「永遠の愛」や「肉親の絆」と…
水の辺(べ)の 馬酔木の若木 小さけれど ほのかに群れて 花つけむとす ― 北原白秋 【現代訳】 水辺に馬酔木の若木がある。まだ小さいけれども春の到来を告げるように、ほのかに仲良く群れて今まさに花を咲かせようとしている…
「クロッカスが咲きました」 という書きだしで ふいに手紙が書きたくなりぬ ― 俵万智(たわらまち) 【現代訳】 まだ寒いと思っていた早春の大地に思いがけず、クロッカスが咲いている。季節からの贈りもの。ふいに「クロッカス…
枸杞(くこ)の実の あけのにほへる 冬の野に 山より小鳥 くだりて鳴くも ― 斉藤茂吉 【現代訳】 枸杞の実の朱色が美しい冬の野に、山から小鳥がやって来て、鳴いていることだなあ。 心に咲く花 2022年47回 枸杞(ク…
やどりせし 人のかたみか 藤袴 わすられがたき 香ににほひつつ ― 紀貫之 【現代訳】 我が家に泊まっていったあの人の形見なのだろうか。 藤袴の花が咲き、忘れ難い香りに包まれていて・・。 心に咲く花 2021年46回 …
つつましい 幸福という 花ことば ナスの花愛(め)で ふたりの暮らし ― 山田道子 【現代訳】 「つつましい幸福」という花言葉がある茄子。煮てもよし、焼いてもよしの茄子を家庭菜園で育てている。星型の可憐な花を二人で愛で…
雨はれて 心すがしく なりにけり 窓より見ゆる 白木槿(しろむくげ)のはな ― 斎藤茂吉 【現代訳】 雨が上がり、晴れ渡って心が清々しく感じられる。窓の向こうには、白木槿のまっしろいさわやかな花が見える。 心に咲く花 …
百日紅(さるすべり)に 日ははや照れり 朝戸出て 汗ばむ顔を 拭きつつゆくも ― 古泉千樫(こいずみちかし) 【現代訳】 百日紅が咲く頃になると本格的な夏だ。朝、あざやかな百日紅を早くもおひさまが照らしている。そんな…
草土手の 風に吹かれて 幼等(おさなら)と ほたるぶくろの 花探しきそふ ― 若山喜志子 【現代訳】 草の伸びた土手の風に吹かれながら、幼いこどもたちとホタルブクロの花を探し競っている。のどかで朗らかな、ある夏の一日。…
石楠(しゃくなげ)は 木曾奥谷に にほへども そのくれなゐを 人見つらむか ― 斎藤茂吉 【現代訳】 石楠花が木曾の奥深い谷に美しく咲いている。こんな険しい場所に咲く見事な「紅」をこれまでも人々は見たのだろうか。 心に…