心に咲く花 62回 土佐水木(とさみずき)
とさみづき芽はいち早し春浅き 屋後(おくご)の雪の片傍(かたそば)に萌ゆ ― 木俣修(きまたおさむ) 【現代訳】 土佐水木はまだ春浅い時期からいち早く芽吹き、家の裏の雪降る片はしにもすでに萌え始めている。 心に咲く花 …
とさみづき芽はいち早し春浅き 屋後(おくご)の雪の片傍(かたそば)に萌ゆ ― 木俣修(きまたおさむ) 【現代訳】 土佐水木はまだ春浅い時期からいち早く芽吹き、家の裏の雪降る片はしにもすでに萌え始めている。 心に咲く花 …
苺たべて子のいき特に甘くにほふ 夕明りどきを母に寄り添ひ ― 五島美代子(ごとうみよこ) 【現代訳】 苺を食べたあとのこどもの息が特に甘い匂いを漂わせている。夕明かり時に母親に寄り添うこどもの息が。 心に咲く花 202…
一鉢に四百の蕾(つぼみ)育つとふ シクラメン冬の花として咲く ― 初井しづ枝(はついしづえ) 【現代訳】 一鉢に400もの蕾が育つと言われるシクラメン。寒さ厳しい冬の時期の花として、暮らしを彩ってくれている。 心に咲く…
茶の花にかくれんぼする雀かな ― 小林一茶(こばやしいっさ) 【現代訳】 秋の終わりから、冬の初めにかけて、白色五弁のふっくらした小さな花を咲かせる茶の木。その花に近づく雀は、まるでかくれんぼをしているかのようだ。 心…
紫苑咲けば 四十日で雪が来ると 呟(つぶや)きし祖母も思い出の中 ― 佐藤ヨリ子 【現代訳】 秋の代表花のひとつ「紫苑」が咲くと、あと四十日で雪が降るとつぶやいていた祖母も、今はもう他界して思い出の中にいる。 心に咲く…
柿の実のあまきもありぬ 柿の実の渋きもありぬ 渋きぞうまき ― 正岡子規(まさおかしき) 【現代訳】 柿の実には甘いものもあれば、渋いものもある。実は渋いものこそ美味しいものだ。 心に咲く花 2022年57回 柿(かき…
鳳仙花ちりておつれば 小さき蟹(かに) 鋏(はさみ)ささげて驚き走る ― 窪田空穂(くぼたうつぼ) 【現代訳】 鳳仙花の花がこぼれ落ちると、その下にいた小さな蟹が驚いて、鋏を上げて走っていくよ。 心に咲く花 2022年…
集い来て よく笑いたる子らなりき ニチニチソウが咲けば想えり ― 鳥海昭子(とりのうみあきこ) 【現代訳】 集まって来て、よく笑う可愛い子どもたちだったなあ。夏の日差しの中で、日日草が元気に咲いているのを見れば、ふと想…
げんのしょうこ ほのかなる香の甘ければ 今日も煎じて枕べに置く ― 小市已世司(こいちみよし) 【現代訳】 古来、民間生薬として知られた「げんのしょうこ」。ほのかな香りが甘く優しいので、今日も煎じて、枕辺に置いている。…
店明かりのやうに色づく枇杷の実の ここも誰かのふるさとである ― 山下翔(しょう) 【現代訳】 まるで店の明かりのように、燈(とも)るように色づいている枇杷の実。ここも誰かにとっての「ふるさと」なのだと思わせてくれる。…