心に咲く花 16回 かきつばた
唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来(き)ぬる 旅をしぞ思ふ― 在原業平 【現代訳】 (何度も来てなじんだ)唐衣のように、(長年慣れ親しんだ)妻が(都に)いるので、(その妻を残したまま)はるばる来てしまった旅(…
唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来(き)ぬる 旅をしぞ思ふ― 在原業平 【現代訳】 (何度も来てなじんだ)唐衣のように、(長年慣れ親しんだ)妻が(都に)いるので、(その妻を残したまま)はるばる来てしまった旅(…
白木蓮の 卵いよいよ 膨らみて 大地の祭り 始まらんとす― 松村由利子 【現代訳】 まるで卵に喩えたくなるような白さまぶしい白木蓮の花が咲くと、春が到来し、大地のお祭りが始まろうとしている。 心に咲く花 2019年15回…
はてもなく 菜の花つづく 宵月夜 母が生まれし 国美しき― 与謝野晶子 【現代訳】 菜の花の黄色が大地を彩るように咲いている。まるで果てがないと思われるほど、あたり一面に。 母が生まれた国は美しいなあと、あらためて思う夕…
河上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨勢(こせ)の春野は― 春日蔵首老(かすがのくらびとおゆ) 【現代訳】 川辺に咲く椿をいくら見ても飽きることがないほど、巨勢野の早春は美しく、すばらしいものだなあ。 心に咲…
白鳥が 生みたるものの ここちして 朝夕めづる 水仙の花― 与謝野晶子 【現代訳】 寒のさなかに咲く水仙はまるで白鳥が生んだような思いになる花です。 朝にも夕暮れにも愛でたくなるすばらしい水仙の花。 心に咲く花 2019…
あらしふく 御室(みむろ)の山の もみぢばは 竜田の川の 錦なりけり― 能因法師 【現代訳】 山風が吹き散らす「御室山」の紅葉が竜田川の水面を彩っている。 その彩りの美しさ、見事さ。まるで錦を織り成したようではないか。 …
秋をおきて 時こそ有りけれ 菊の花 うつろふからに 色のまされば― 平貞文 【現代訳】 秋を過ぎても盛りの時期がある菊の花。色が移ろいゆくほどに味わい深く、美しさがさらに優ってゆくのだから。 心に咲く花 第10回 菊 古…
曼珠沙華 咲く野の日暮れは 何かなしに 狐が出ると おもふ大人の今も― 木下利玄 【現代訳】 彼岸花とも呼ばれる「曼珠沙華」が咲いている野の夕暮れは、何となく狐が出ると思われるよ、大人になった今でも。 心に咲く花 第9回…
我が里に 今咲く花の をみなへし 堪(あ)へぬ心に なほ恋ひにけり― 『万葉集』詠み人知らず 【現代訳】 私の里に咲いているつつましやかで麗しいおみなえし。 そんな花のように可憐なあの人に会いたくて、堪え難いまでに恋しく…
夏深み 入江のはちす さきにけり 浪にうたひて すぐる舟人 ― 藤原(九条)良経 【現代訳】 夏が深まりゆく入江には蓮の花が咲いています。 水上に大きな多弁の花を咲かせる蓮の花。あまりにも美しいその姿に、舟を漕ぐ人も思わ…