心に咲く花 65回 野いばら
野茨をりて髪にもかざし手にもとり 永き日野辺に君待ちわびぬ ― 与謝野晶子(よさのあきこ) 【現代訳】 野茨を手折り、髪にかざしたり、手にも取ったりしながら、長い時間、野辺であなたを待ちわびていた。 心に咲く花 202…
野茨をりて髪にもかざし手にもとり 永き日野辺に君待ちわびぬ ― 与謝野晶子(よさのあきこ) 【現代訳】 野茨を手折り、髪にかざしたり、手にも取ったりしながら、長い時間、野辺であなたを待ちわびていた。 心に咲く花 202…
幾年(いくとせ)も共に仰ぎしジャカランダ ことし吹雪てわれを被いぬ ― 冷順子 【現代訳】 何年もともに過ごし、ずっと一緒に仰いできたジャカランダが今年も咲いている。今年は一人で見上げるジャカランダ。その花吹雪が励ます…
ウインドに春の濡れ雪ふりかかり 幻のごとアマリリス匂ふ ― 加藤克巳(かとうかつみ) 【現代訳】 窓辺に春の濡れ雪がふりかかる。 そんな中、まるで幻のように幻想的に美しいアマリリスが咲き薫っている。 心に咲く花 202…
とさみづき芽はいち早し春浅き 屋後(おくご)の雪の片傍(かたそば)に萌ゆ ― 木俣修(きまたおさむ) 【現代訳】 土佐水木はまだ春浅い時期からいち早く芽吹き、家の裏の雪降る片はしにもすでに萌え始めている。 心に咲く花 …
苺たべて子のいき特に甘くにほふ 夕明りどきを母に寄り添ひ ― 五島美代子(ごとうみよこ) 【現代訳】 苺を食べたあとのこどもの息が特に甘い匂いを漂わせている。夕明かり時に母親に寄り添うこどもの息が。 心に咲く花 202…
一鉢に四百の蕾(つぼみ)育つとふ シクラメン冬の花として咲く ― 初井しづ枝(はついしづえ) 【現代訳】 一鉢に400もの蕾が育つと言われるシクラメン。寒さ厳しい冬の時期の花として、暮らしを彩ってくれている。 心に咲く…
茶の花にかくれんぼする雀かな ― 小林一茶(こばやしいっさ) 【現代訳】 秋の終わりから、冬の初めにかけて、白色五弁のふっくらした小さな花を咲かせる茶の木。その花に近づく雀は、まるでかくれんぼをしているかのようだ。 心…
紫苑咲けば 四十日で雪が来ると 呟(つぶや)きし祖母も思い出の中 ― 佐藤ヨリ子 【現代訳】 秋の代表花のひとつ「紫苑」が咲くと、あと四十日で雪が降るとつぶやいていた祖母も、今はもう他界して思い出の中にいる。 心に咲く…
柿の実のあまきもありぬ 柿の実の渋きもありぬ 渋きぞうまき ― 正岡子規(まさおかしき) 【現代訳】 柿の実には甘いものもあれば、渋いものもある。実は渋いものこそ美味しいものだ。 心に咲く花 2022年57回 柿(かき…
鳳仙花ちりておつれば 小さき蟹(かに) 鋏(はさみ)ささげて驚き走る ― 窪田空穂(くぼたうつぼ) 【現代訳】 鳳仙花の花がこぼれ落ちると、その下にいた小さな蟹が驚いて、鋏を上げて走っていくよ。 心に咲く花 2022年…