郷土のお肉料理(岐阜県と新潟県)

星澤幸子の和食のチカラ 2024年6月- 7月 郷土のお肉料理(岐阜県と新潟県)


ご当地メニューで旅気分

今回は日本の郷土料理、言わばご当地メニューのご紹介です。私の愛する故郷、北海道をはじめとして、過去にも何度か取り上げてきたテーマですが、日本にはその土地の風土や歴史に根差した郷土料理が数えきれないほど存在します。
コロナ禍が落ち着いたと同時に、日本を訪れる外国の方々が急増していますが、私たち日本人も含め、その旅の大きな楽しみのひとつがご当地メニューであることは間違いないでしょう。

今回取り上げるのは、お肉をメインにしたお料理です。
まずは、岐阜県の「鶏ちゃん」。もともとは郡上市や下呂市などで食べられてきた家庭料理でしたが、今では飲食店のメニューになり、町おこしののための観光資源として全国のグルメイベントなどにも登場しています。
農林水産省のサイト「うちの郷土料理」によると、名前の由来は、豚のホルモン焼きを「とんちゃん(豚ちゃん)」と呼ぶことから「けいちゃん(鶏ちゃん)」と言われるようになったという説や、混ぜ合わせるという意味の「ちゃん」と「醤(じゃん)」を合わせた「鶏醤(けいじゃん)から「鶏ちゃん」になったという説があるそうです。卵を産まなくなった鶏を、大切なタンパク源として利用したのがその始まり(1950年ごろ)といいます。ひと口大に切った鶏肉と野菜に特製のタレを絡めて炒めたもので、その味付けや作り方はそれぞれの家庭や飲食店によって違いがあるようですが、今回は「星澤流の鶏ちゃん」をどうぞ。

もうひとつは、新潟県の「タレかつ丼」です。一般的な卵でとじたかつ丼とは違って、薄めの肉を使い薄めの衣で揚げたかつを、揚げたての状態で甘辛いしょうゆダレにくぐらせてご飯にのせたもの。ご飯とかつのみのシンプルにして美味なご当地メニューです。江戸時代から北前船で栄えた港町である新潟市は、幕末に開港され、海外との貿易が始まることによって、洋食文化が花開きました。そのなかの老舗の洋食店で昭和初期に誕生し、瞬く間に評判を呼び、市内そして県内に拡がった、今や新潟県民のソウルフードです。

今宵は、ご当地メニューを食卓にのせて、その土地の歴史や風土に思いを馳せながら旅行気分を味わってみてはいかがでしょう。

このページでご紹介するレシピ


ご飯がすすむ岐阜県の郷土料理
鶏ちゃん(けいちゃん)

【材料】(2~4人分)

鶏モモ肉 1枚
油 大さじ1杯
キャベツ 200g
タマネギ 小1個
ニンジン 30g
ピーマン 1個
パイロゲン キャップ1杯(約5.5ml)
【調味料】
味噌 大さじ2杯
しょうゆ、酒 各大さじ1杯
おろしニンニク 1片分

【作り方】

  1. 鶏モモ肉は小さめの一口大に切ります。ポリ袋に鶏肉と調味料とパイロゲンを加えてもみ込みます。
  2. キャベツは大きめの一口大、タマネギは1㎝幅に切り、ニンジンとピーマンは1㎝幅の薄い短冊に切ります。
  3. フライパンに油を熱して、鶏肉を調味料ごと入れて焼きます。焼き色が付いたら返し、キャベツ、タマネギ、ニンジン、ピーマン、パイロゲンをふり入れてフタをして蒸し焼きにします。
  4. 鶏肉に火が通ったら、混ぜ合わせていただきます。

ポリ袋に鶏肉と調味料、パイロゲンを入れてもみ込む。

野菜を切りそろえておく。

蒸し焼きにする前にさらにパイロゲンを。

シンプルイズベスト、新潟県のご当地かつ丼
タレかつ丼

【材料】(2人分)

豚モモ肉(一口かつ用) 6枚
小麦粉 少々
天ぷら衣(小麦粉、水 各大さじ3杯)
パン粉、揚げ油 各適量
ご飯 2膳
海苔 1枚
【タレ】
しょうゆ、みりん 各大さじ2杯
てんさい糖 大さじ1杯
パイロゲン キャップ1杯(約5.5ml)

【作り方】

  1. 豚肉は、包丁の背でたたいて薄くします。
  2. 小麦粉、天ぷら衣、パン粉の順につけて、中温の油(170℃前後)でキツネ色に揚げます。
  3. タレの調味料とパイロゲンを小鍋に入れて沸騰させます。揚げたかつをタレにくぐらせて、器に盛ったご飯にのせ、海苔の千切りを天盛りします。

豚肉は包丁の背で叩いて薄くする。

かつは中温の油できつね色に。かつが薄めなので油も少量でOK。

調味料とパイロゲンを火にかけてタレづくり。


星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん

料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。

星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com