星澤幸子の和食のチカラ 第4回 おせち料理
お正月といえばおせち料理。近年では、飲食店からデパート、スーパー、コンビニまで様々なお店や企業が、おせち料理を販売しています。
そうした出来合いのおせち料理もいいのですが、今年は何か一品でもいいので、手作りのおせち料理にトライしてみませんか。
日本での正月はその年の年神様を家にお迎えし、お祝いをする行事です。
もともとは1月の別名で、期間としては1月1日から1月3日の三が日や、1月7日までが一般的ですが、地方によっては20日頃までを指すこともあるそうです。
昨日と今日とで何かが変わるわけではありませんが、地球上の様々な文化を持つ人々がいっせいにお祝いするのですから楽しいですね。
日本では、神様が迷わず我が家にも来て下さるように門松飾りをし、お招きするためのご馳走の用意や大掃除をして下着も新しいものにするなど、準備も大変です。
子どもの頃、普段は忙しくなりふり構わず働いている母が、元旦の朝には着物を着ていて、家族一人ひとりに丁寧に「おめでとうございます」と挨拶していたので、お正月は特別な日なんだと思ったものでした。
今回のテーマは、その特別な日にいただく「おせち料理」です。
現在ではお正月に食べる料理を指しておせち料理と言いますが、先人は自然の恵みや収穫に感謝して供えたものを「節供(せっく)」といい、供えたものを感謝して食べた料理を「節供料理」と言いました。
これがおせち料理の始まりで、お重の詰め方、料理にもそれぞれ意味があります。
- 【黒豆】黒色は道教で魔よけの色とされており、一年まめに働き、まめに健康に暮らせますようにとの願いが込められています。
- 【きんとん】金団と書いて金銀財宝を意味し、金運を呼ぶ縁起ものです。
- 【紅白なます】紅白は水引を表し、平安と平和を願っています。
- 【伊達巻】伊達は華やかさを表し、また、伊達巻の形が巻物に似ていることから、文化の発展または学問や習いごとの成就を願ったものです。
- 【筑前煮・煮しめ】根菜をはじめ野菜、鶏肉などを一緒に煮た煮しめには、家族仲良く一緒に結ばれるという意味があります。
食べることで健康に、幸せに過ごせるという日本人の知恵と、とんちの効いた言葉の遊び心と深い意味が、おせち料理には込められているのではないでしょうか。
一からすべて家で作るのは大変でしょうが、家族やご自身の身体を思い、一品でも手作りしてお祝いをと、作りやすいレシピをご紹介させていただきました。
≪お手軽黒豆≫
~煮汁まで美味しい栄養満点の簡単黒豆~
【材料】(作りやすい分量)
黒豆カップ 1杯/水カップ 5杯
【調味料】てんさい糖 120g/しょうゆ 大さじ1杯/パイロゲン キャップ2杯
【作り方】
- 黒豆は洗ってから鍋に入れ、分量の水、調味料、パイロゲンを入れて一晩置きます。
- 鍋を火にかけ、沸騰したら火を弱めて黒豆が軟らかくなるまでゆっくりコトコト煮ます。軟らかくなったら煮詰めてツヤを出します。
≪ごちそうなます≫
~柚子入りなますでお口をさっぱりと~
【材料】(作りやすい分量)
大根 300g/ニンジン 50g/ゆり根 小1個/柚子 小1個/塩 少々/枝豆 大さじ4杯
【調味料】てんさい糖 大さじ2杯/酢 大さじ2杯/塩 少々/パイロゲン キャップ1杯
【作り方】
- 大根とニンジンは千切りにし、それぞれ塩少々をまぶします。大根は水気を絞り、ニンジンはサッと水洗いをしてから水気を絞ります。
- ゆり根はすすいでから根を切り取り、1枚ずつはがして丁寧に洗います。大きいものは半分に切り、茶色く傷んだ部分は切り取ります。塩少々を入れた湯で茹でます。柚子は皮を薄く削いで千切りにし、実は絞ります。
- ボウルに調味料と柚子の絞り汁、パイロゲンを合わせ、大根とニンジンを入れて混ぜてから1~2時間置いて味をなじませます。
- いただく直前に他の材料も加えて混ぜ、味をなじませます。
≪簡単伊達巻≫
~家で作るからこそできる、甘すぎない伊達巻~
【材料】(1本分)
卵 3個/はんぺん 1枚/水 大さじ2杯
【調味料】みりん 大さじ1杯/酒 大さじ1杯/てんさい糖 大さじ2杯/塩 ひとつまみ/パイロゲン キャップ1杯/油 少々
【作り方】
- ミキサーに卵1個とざく切りにしたはんぺん、分量の水、調味料、パイロゲンを入れて滑らかになるまで回します。残りの卵を入れて少し回します。
- 卵焼き器に油を薄く塗り、“1”の卵液を流し入れてフタ代わりにバットをのせ、弱火で15分焼きます。
- 表面が乾いて焼き色が付いたら、焼き目を下にしてすだれにのせます。手前からきっちり巻いて、輪ゴムで留めて立てて冷まします。
- 冷めたら1.5cm幅に切ります。
≪筑前煮≫
~おせちには欠かせない具だくさんの煮物~
【材料】(作りやすい分量)
鶏もも肉 1枚/油 大さじ1杯/茹でタケノコ 50g/ニンジン 1本/ゴボウ 1本/レンコン 100g/こんにゃく 1丁/塩 少々/干シイタケ 4枚/高野豆腐 2枚/銀杏 12粒/水+シイタケの戻し汁 カップ1杯
【調味料】しょうゆ 大さじ4杯/てんさい糖 大さじ3杯/酒 大さじ2杯/みりん 大さじ2杯/パイロゲン キャップ2杯
【作り方】
- 鶏肉、タケノコはひと口大、ニンジンは1cmの厚さに切って型で抜き、ごぼうは皮をこすり洗いして斜め1cm幅に切って水に浸し、何度も水を替えてアク抜きします。
レンコンは皮をむいて縦半分に切り、1cmの厚さに切って飾り包丁をします。
こんにゃくは塩でもんでから洗って、1cmの厚さに切り、手綱こんにゃくにします。
干シイタケと高野豆腐は戻し、シイタケは石づきを取り、高野豆腐はひと口大に切ります。
銀杏は熱湯に入れて火を通し、薄皮をむきます。 - 鍋に油を熱して鶏肉を入れ、よく焼いてからゴボウ、こんにゃく、干シイタケの順に入れて炒めます。
- 分量の水とシイタケの戻し汁、調味料、パイロゲン、銀杏以外の材料を加えて、落としブタをして20分程煮ます。途中で上下を返します。
- そのまま冷まし、味をなじませます。器に盛り、串に刺した銀杏をあしらいます。
≪リンゴきんとん≫
~おせちのお洒落なデザートです~
【材料】(作りやすい分量)
リンゴ 中1個/てんさい糖 大さじ3杯/レモン汁 1/2個分/パイロゲン キャップ1杯/サツマイモ(正味) 300g/てんさい糖 50g
【作り方】
- リンゴは8つ割りにしてから種を取って皮をむき、7~8mmのいちょう切りにします。鍋に入れ、てんさい糖大さじ3杯、レモン汁、パイロゲンを加えて、リンゴが透き通るまで煮ます。
- サツマイモは皮をむいて1cm程度の厚さに切ってサッとすすぎ、鍋に2cm程の高さの水を入れて煮ます。水分を少し残して熱いうちにつぶし、てんさい糖50gを加えてなめらかにしてからリンゴを加えて混ぜます。
星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん
料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。
星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com
2017年1月発刊『BOSCO 17号』掲載記事
撮影/大滝恭昌