日本人とお米の切っても切れない大切な関係

星澤幸子の和食のチカラ 第1回 米


2013年、ユネスコの世界無形文化遺産に登録され、世界的に注目が集まる「和食」。日本人が育んできた豊かな食文化とその「チカラ」を、ご家庭の食卓で味わっていただくための連載がスタートしました。その第1回は、日本人とは切っても切れない主食、「お米」です。

(上の写真:右上は白米、右下は五分づき、左は玄米)


日本人の起源は、世界で最も古く長い縄文文化に始まります。1万3千年もの間、集団を成して定住し、自然と寄り添いながら生き、人間同士が争う武器は見つかっていないとか。今から3千年前の弥生時代には米が伝来して稲作が始まり、程なく日本という国が誕生します。稲穂の国日本も今年で皇紀2676年、今上天皇で125代、天皇のお勤めの多くは米に関するものだということです。

稲作が始まって人口は増え、日本文化が発展して来ました。食文化の中心は米であり、様々な米の料理が伝統食として引き継がれています。かつて気は氣と書き、米を食べなければパワーが出ないと教えられ、よく噛んで食べて体力気力を充実させ、知力を養い、人々は国を成長させてきました。

終戦を経て皆が米を食べられるようになり、1960年には一人当たりの消費量が118kg(年間)に。ところが55年を経て57kgにまで減ってしまいました。

お米の大事さを見直す時が来ている

現代が抱える病の増加、出生率の低下、子どもにおける気力・体力・学力の低下と、我々が適応食を食べなくなったことは果たして無関係でしょうか? 量もさることながら、「一物全体」とあるように、そのもの全体を食することに栄養バランスの秘訣があるように思います。米も周りの表皮や胚芽を全部取ってしまうのではなく、せめて精米を五分づきにしていただくと体のために嬉しいですね。五分づき米は白米と同様、普通に炊けます。

白米を横に並べたら「粕」という字になります。白米が流行した江戸時代、江戸病(かっけ)で多くの人が死にました。先人はそれを知ってか知らずか、玄米や味噌汁、わずかなおかずを良く噛んで大事に食べることで「腹八分目」に自制し肥満も無かったようです。

地球の裏側から食べ物が届く現代ですが、数万年にわたり命を繋ぐ動物それぞれに適応食があるように、人も身の周りで採れるものを食すること事が自然であることを思い出し、我々の歴史と共にあり続けた米の大事さを見直す時に来ているのではないでしょうか?

★洗い方のコツ たっぷりと水を入れます。お米も乾物ですから最初につける水を最も多く吸収します。汚れた研ぎ汁が吸収されないよう、ひと混ぜしたらすぐ水を捨てましょう。

★研ぎ方のコツ 現在の精米技術はとても進んでいるので、押さえつけるようゴシゴシ揉むのではなく、手のひらに乗せ、優しく揉むようにしながら全体を研ぎます。

玄米は、脱穀した米から硬い籾殻を取り除いたもの。 白米は種皮や胚芽など糖層のほとんどを取り除いたもの。

≪いつでもすぐに乾物炊き込みご飯≫

~米も野菜も乾物同士、水と調味料であっという間に滋養強壮ご飯~

【材料】(4人分)

五分づき米 2合/干しシイタケ スライス ひとつまみ/細切り昆布 ひとつまみ/黒千石大豆 大さじ4杯/切り干し大根 30g/なめたけ 小1瓶/ひじき2g
[調味料]
酒 大さじ2杯/しょうゆ 大さじ2杯/パイロゲン 小さじ1杯

【作り方】

  1. 米は炊く30分前に研いで分量の水に浸しておきます。
  2. 材料、調味料、パイロゲンを加えすぐに炊きます。
  3. 炊き上がったらすぐにヘラ返しします。

≪深川飯≫

~江戸時代には貝類がザクザク採れたそうな~

【材料】(4人分)

五分づき米 2合/アサリ 200g/ショウガ 1片/万能ネギ 少々
[調味料]
酒 大さじ1杯/しょうゆ 小さじ1杯/塩 小さじ1杯/パイロゲン 小さじ1杯

【作り方】

  1. アサリはパイロゲン(分量外)を入れた塩水に入れて一晩おき、砂出しをしてから、殻をこすり洗いします。
  2. 米は炊く30分前に研いで分量の水に浸しておきます。ショウガは千切り、万能ネギは小口切りにします。
  3. 米に調味料とパイロゲンを入れてひと混ぜし、アサリ、ショウガをのせて炊きます。
  4. 炊き上がったらすぐにヘラ返しし、器に盛って万能ネギをあしらいます。

≪いろいろ結び≫

~1500年前から作られているお結び、世界最古のファストフード今こそ大切な米の力と愛の結びを~

≪焼きおにぎり≫

【材料】(2個分)

五分づきご飯 160g/味噌 少々/みりん 少々/白ごま 少々/しょうゆ 少々

【作り方】

  1. 五分づきご飯を半量ずつラップにのせ、三角形に2つ結びます。1つには、みそとみりんを合わせて塗り、半ずりにした白ごまをのせます。1つには、刷毛でしょうゆを塗ります。
  2. 魚焼きグリル又はオーブントースターで軽く焦げ目が付くまで焼きます。

≪海苔結び≫

【材料】(3個分)

五分づきご飯 240g/海苔 1/3枚/梅干し 1/2個/かつお節 少々/しょうゆ 少々/ネギみそ 少々

【作り方】

  1. 五分づきご飯を3等分してラップにのせ、三角形に3つ結びます。中央を少しくぼませ、梅干し、かつお節としょうゆを混ぜたもの、ネギみそをそれぞれ詰めます。
  2. 海苔を細長く切り、ご飯の周りを巻きます。

≪丸結び≫

【材料】(7個分)

五分づきご飯 350g/桜の葉 1枚/野沢菜漬けの葉 大1枚/とろろ昆布、味付ちりめんじゃこ、枝豆、ゆかり、ショウガ 各少々

【作り方】

  1. 五分づきご飯を7等分し、3つはラップにのせて丸く結びます。桜の葉、野沢菜漬けの葉、とろろ昆布を広げそれぞれご飯をのせて包みます。
  2. 残りの4つにちりめんじゃこ、みじん切りにしたゆかり、枝豆、ショウガをそれぞれ混ぜて、ラップにのせて丸く結びます。

≪おにぎらず≫

【材料】(1個分)

五分づきご飯 80g/海苔 1枚/さんま蒲焼き缶 1/2缶/リーフレタス 1枚/ショウガ 少々

【作り方】

  1. ラップに海苔をのせ、中央に半量のご飯とレタス、さんま蒲焼き缶、千切りのショウガをのせます。残りのレタス、ご飯を重ねて海苔で包み、ラップで包んで少しおきます。
  2. 食べやすく半分に切ります。

※でき上がった結びそれぞれに、パイロゲンを噴霧します。

≪パーティーちらし≫

~炊き上がったら寿司ご飯、特別な物がなくてもパーティーの一品に~

【材料】(4人分)

[具材]
塩鮭 2切れ(酒、水 各大さじ2杯)、卵 2個(塩、てんさい糖、油 各少々)、昆布 10cm(揚げ油 適量)、ブロッコリー 1/2株(塩、油 各少々)、ミニトマト 8個、キュウリ 小1本、はんぺん 1枚
[酢飯]
五分づき米 2合/酢 大さじ 4杯/てんさい糖 大さじ2杯/塩 小さじ1杯/パイロゲン 小さじ1杯/白ごま 大さじ2杯

【作り方】

  1. 米は炊く30分前に研いで分量の水に浸し、調味料、パイロゲンを入れて炊きます。炊けたらごまを加えて、すぐにヘラ返しして冷まします。
  2. 鍋に塩鮭、酒、水を入れて蒸し煮します。火が通ったら骨と皮を取り、箸数本で炒りながらそぼろ状にします。
  3. ボウルに卵を割り入れて混ぜ、調味料を加えてよく混ぜます。フライパンに油を熱して卵を入れ、ふんわりとした炒り卵を作ります。
  4. 昆布はひと口大に切って、高温の油で膨らむまで揚げます。
  5. ブロッコリーは小房に切り、塩と油を入れた湯でサッと茹でます。キュウリはスライサーで薄く切って丸め、はんぺんはひと口大の三角形に切ります。
  6. 器に酢飯を盛り、材料を彩りよく盛ります。

星澤幸子(ほしざわ さちこ)さん

料理研究家。北海道南富良野町生まれ。札幌テレビ「どさんこワイド」の料理コーナー「奥様ここでもう一品」に25年毎日出演し、北海道の素材にこだわったお手軽な料理を紹介。その出演回数は現在もギネス記録を更新中。2009年「東久邇宮文化勲章」を受賞。著書は『あなたに贈る食の玉手箱』(ワニ・プラス)他多数。

星澤クッキングスタジオ公式サイト
http://www.hoshizawa-s.com


2016年4月発刊『BOSCO 14号』掲載記事
撮影/大滝恭昌