フジバカマの仲間 ~アサギマダラを呼ぶ植物~

AKATSUKA グリーン通信vol.257  2020.9月号


日本人ならフジバカマ(Eupatorium japonicum)という植物の名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

山上憶良が万葉集で歌を詠んで以来、秋の七草の一つとして知られていますが、実際に野原で見かけたことがある方は少ないかと思います。
本種は日当たりのよい河原の湿った草地などに自生する多年草(宿根草)で、近年河川の護岸工事により自生地が消失し、環境省のレッドリストで準絶滅危惧に指定されています。

分類学的にはヒヨドリバナ属で日本には他にヒヨドリバナ、サワヒヨドリなど8種が知られています。和名の由来は花が藤色で花びらが袴(はかま)の形をしているからですが、その他諸説あるようです。
属名のEupatorium(ユーパトリューム)は紀元前1世紀頃、小アジアのユーパトール王がフジバカマの仲間を薬用植物として好んで用いたことに因みます。現在も蘭草(らんそう)と呼び漢方薬に利用されます。乾燥すると桜餅の葉のような芳香を放つため、昔は匂い袋などにも利用されたようです。

フジバカマの名で販売されているほとんどは雑種で、本種よりも丈夫で大きくなります。分類にもよりますがフジバカマの仲間は北米を中心に500種以上あり、ユーパトリュームとして販売されています。
2m以上にもなる大型強健種のアトロパープレウムや、斑入り葉の美しいピンクフロスト、銅葉のチョコラータ、箒のような葉をもつグリーンフェザー、中国に自生するムラサキフジバカマ(濃色フジバカマ)、花が玉咲きのものや葉の切れ込みが深く美しい羽衣という品種などがあります。

ユーパトリューム アトロパープレウム

フジバカマと渡りの蝶

フジバカマの仲間にはアサギマダラという蝶のオスが好んで訪れます。
まだよく解明されていないようですが、フジバカマに含まれる物質〝ピロリジジンアルカロイド〟の摂取が性フェロモンの分泌に必要だからと言われています。
アサギマダラは旅をする蝶としても知られ、台湾や東南アジアなどから日本へやってきます。中には2500㎞もの長旅をして日本に飛来したものもいるようです。

特に近年、この蝶の飛来ルートを全国的に調査研究する活動が盛んになり、フジバカマ類が日本各地で植栽され注目を浴びています。中でも日本各地に多く自生するヒヨドリバナは、丈夫で花期も8~10月と長いためよく植栽されるようです。

造園でもバタフライガーデンが度々注目されており、活躍の場が更に増えています。蝶は小花がたくさん咲く花に好んで訪花するため、ランタナや、バーベナ、ブッドレア、ペンタス、アガスターシェなどもよく使われます。

フジバカマとアサギマダラ

育て方のポイント

ユーパトリュームの仲間はどれも丈夫なので、放任でよく育ちます。ただし日照不足と水切れは禁物です。日当たりの良い場所で水を切らさないのが元気に育てるコツです。
非常に生育旺盛で根茎をたくさん伸ばしどんどん増えるため、小さく維持したい場合は根が広がらないよう株分け、植替えなどを行います。株分けや挿し木も比較的簡単なので興味のある方は一度チャレンジしてみて下さい。株分けは2月頃、挿し木は梅雨時期が適期です。

レッドヒルヒーサーの森でも7~10月頃、園内各所でフジバカマをはじめユーパトリューム類の花々を見ることができます。ご興味のある方はぜひ一度ご来園下さい。

レッドヒル ヒーサーの森“スイレン池”に咲くユーパトリューム アトロパープレウム


文/工藤 一成


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