AKATSUKA グリーン通信vol.259 2020.10月号
春と秋には必ず園芸店の店頭に並ぶ球根類。チューリップやクロッカス、スイセン、ヒアシンスなどお馴染みのものが多々あると思います。でも、植えたのに花が咲かない、芽が出てこないなどの経験をした方も少なくないのではないのでしょうか。
そういった方におすすめなのが野放し球根です。一度植えると数年間ほったらかしでも勝手に増えて毎年花を咲かせます。春植え、秋植えの二つに大きく分けられますが今回は秋植えを紹介します。
野放し球根の代表的なものといえばやはり原種チューリップ。クルシアナはその中の代表的な品種です。その他トルケスタニカ、ヘレナ、チンカ、レッドアンドパープル、ブライトゼム、アニカ、リジーなどがあり色も様々。野趣に富み可憐で山野草チックな魅力があります。
見た目が可愛いから弱いと思われがちですがとんでもありません。花が終わったら花がらを切り…。葉が枯れてきたら掘り上げて…。風通しのよい涼しい場所に保管して…。秋になったらまた植えなおして…。なんて面倒なことは皆無です。野放しの名のごとく一度植えたらあとはほったらかし。それなのに毎年美しい花を咲かせてくれる…。忙しい現代人にはまさにうってつけの球根なのです。
花が華奢で草丈も低く野趣溢れるので、一つずつ丁寧に等間隔で植えるより、花壇やガーデンなどの前方、もしくは斜面などにいくつかまとめて群集させて植える方がおすすめです。春の花壇のひとつのアイテムとしてパンジーなどの草花の間に仕込んでおくこともできます。
その他、クロッカス、アイフェイオン(ハナニラ)、スイセン、シラー・カンパニュラータ、ムスカリ、スノードロップ、原種シクラメンなども同様に野放しできるおすすめの球根類です。
野放し球根は、四季折々、様々な花を同じ場所で咲かせる〝多層プランティング〝にも向いています。どの種類も丈夫なうえ、病害虫の心配もほどんどどないので初めての方でも簡単に育てられます。鉢植えの場合は大きめの鉢に通常より広い間隔で植えれば数年間は植替え不要です。ただし、間隔が狭いと新しくできた球根が大きくなれず、翌年花が咲かなくなるので注意が必要です。
育て方のコツ
丈夫で手間いらずですが、生育にはやはり日当たりと水はけのよい場所は必要です。秋植えの野放し球根は早春に咲くものが多いので、庭植えの場合は落葉樹の下などに植えると寂しくなりがちな株元をいち早く華やかに彩ってくれます。夏には木陰が球根類や一緒に植栽する草花を夏の強い日差しや暑さから守ってくれるので一石二鳥です。
一つだけ気を付けることは、お気に入りの球根をどこに植えたのかちゃんとわかるようにしておくことです。秋植え球根のほとんどは夏頃には葉が枯れ、地上部は無くなります。ですが、地中では球根がしっかりと育っています。来年さらにたくさんの花を咲かせてくれる球根を台無しにしないためにも十分注意しましょう。特に、他の草花や宿根草などと混植している場合、誤って移植ごてなどで球根を傷つけないよう注意してください。
レッドヒル ヒーサーの森では園内のあちらこちらに野放し球根が植栽してあります。2月から5月頃にかけて、原種チューリップをはじめ、上記の野放し球根を花壇やボーダーガーデン、斜面、大木の下など、様々な場所で見ることができます。
春咲き野放し球根の開花期はクリスマスローズの開花期ともちょうど重なります。ご来園の際には野放し球根類にも目を向けていただければと思います。
文/工藤 一成
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