指導=
森谷敏夫(京都大学名誉教授/京都産業大学教授/中京大学客員教授)
吉田直人(NSCAジャパンHPCヘッドコーチ・ストレングス&コンディショニングコーチ)
「筋トレ前」と「筋トレ後」のストレッチを覚えよう
筋トレ前後にはぜひストレッチを行ってください。ストレッチだけを単独で行ってももちろんかまいません。
ただ、ストレッチといっても、実はふたつの種類があることを知っておきましょう。
● 動的ストレッチ(アクティブストレッチ)
このふたつです。
静的ストレッチというのは、簡単に言えば、筋肉を伸ばした姿勢で静止して、じっくりと筋肉を伸ばすという方法。
リラックス効果があり、関節可動域を広げ、筋肉をゆるめます。
動的ストレッチとは、軽い運動によって血流を促進しながら行うストレッチで、ウォームアップ効果があります。
血流によって筋肉に酸素を送り込み、力を発揮しやすくなります。アドレナリンが分泌され「やる気」もわいてきます。
つまり、筋トレ前のウォームアップとして向くのは「動的ストレッチ」で、筋トレ後のリラクゼーションに向くのが「静的ストレッチ」というわけです。
スポーツや筋トレを行う場合、事前に静的ストレッチをやりすぎると、リラックスしすぎて筋トレに向かう意欲がむしろそがれてしまいます。
軽いウォームアップとして「動的ストレッチ」を行ってから、筋トレを行うと非常に効果的です。
筋トレの前などに行うとよい動的ストレッチ
=ウォームアップ効果
回数にはあまりこだわらず、無理のない範囲から始めてください。
片足で立つものは、壁や頑丈な家具などに手を添えて行うと安心です。
★ 動的ストレッチA (大腿四頭筋を伸ばす)
左右交互に1回ずつ5秒静止を、計3~6回
右足の甲を持ち、かかとをお尻に引きつけて5秒静止。
※片手を壁などについて行ってもよい。
★ 動的ストレッチB (お尻の筋肉を伸ばす)
左右交互に1回ずつ2秒静止を、計5~10回
まっすぐ立って右足を上げ、両手で足を引き上げて2秒静止して下ろす。
★ 動的ストレッチC (太ももの裏を伸ばす)
左右交互に足を出し、5~10歩前に進む
①1足ぶん右足を前に出し、体を前に倒していく。
②指先がつま先に触れたら1秒静止。
③体を起こし、今度は左足を前に出して同じようにする。
★ 動的ストレッチD (下半身全体を伸ばす)
左右交互に計6~10回
①まっすぐに立つ。
②片足を前に踏み出して腰を落とし1秒キープ。
(できれば膝が90度になるまで曲げる。できない場合は浅くてよい)
※前傾したり、膝が内側や外側に向かないように注意。
筋トレの後などに行うとよい静的ストレッチ
=リラックス効果
反動をつけて無理に伸ばそうとせず、痛いと感じる直前で静止するようにしてください。
伸ばす部分以外は動かさないように気をつけて、伸ばしたい場所だけをしっかりと伸ばすことを意識することが重要です。
伸ばしていくときは息をゆっくりと吐き、静止したら静かな呼吸を自然に続けます。
★ 静的ストレッチA (股関節、太ももの内側を伸ばす)
30秒静止を2回
①膝を伸ばして開脚する(開く範囲内でOK)。
②背筋を伸ばし、息を吐きながら上体を倒せるところまで倒し、30秒静止する。
★ 静的ストレッチB (太ももの前側を伸ばす)
30秒静止を左右1回ずつ
横向きに寝て、上の足の甲を手で持ち、かかとをお尻に引きつけて、30秒静止する。
★ 静的ストレッチC (腰全体を伸ばす)
30秒静止を左右1回ずつ
仰向けになり、体をひねるようにして右膝を左側にもっていき、右膝を左手で抑えるように伸ばして、30秒静止する。
右肩は床から浮かさないように注意。
★ 静的ストレッチD (肩周辺の筋肉を伸ばす)
30秒静止を左右1回ずつ
右腕を左方向にまっすぐ伸ばし、肘部分を左腕で手前に引き寄せて、30秒静止する。
※腕を引きよせるときに胴体を回さないように注意!
★ 静的ストレッチE (肩、二の腕を伸ばす)
30秒静止を左右1回ずつ
右肘を曲げて手を背中に置き、左手で右肘を頭に引き寄せ、後ろに引っ張るようにして、30秒静止する。
<一生動ける・歩ける体を作る 自宅筋トレ講座 Part 3.>
森谷 敏夫(もりたに・としお)
1950年、兵庫県生まれ。1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、京都大学教養部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て2016年から京都大学名誉教授、京都産業大学・中京大学客員教授。専門は応用生理学とスポーツ医学。著書に『京大の筋肉』(ディジタルアーカイブス)、『やせられないのは自律神経が原因だった』(青春出版社)、『定年筋トレ』(ワニブックスPLUS新書)ほか。
吉田 直人(よしだ・なおと)
1976年、千葉県出身。千葉県私立成田高校、中央大学経済学部卒業。一度は金融業に就職するも、トレーナーの道を選ぶ。ウイダートレーニングラボでヘッドS&Cコーチ、ラグビートップリーグのホンダヒートでヘッドS&Cコーチとして5年間従事し、2017年4月よりNSCAジャパンヒューマンパフォーマンスセンターヘッドS&Cコーチを務める。資格:CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)、NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)著書に『定年筋トレ』(ワニブックスPLUS新書)ほか