“いい水”への徹底したこだわりと
FFCテクノロジーの導入が生み出す
麺好きを虜にする「味」と「品質」
「皿うどん」と「ちゃんぽん」、言わずと知れた長崎の2大“ご当地名物麺”だ。
その地元・長崎県大村市には、FFCテクノロジーを採り入れて幅広い取引先から高い評価を得ている製麺会社がある。
そこで今回は、おいしさと品質と安定提供にこだわる麺づくりの現場を取材した。
FFCノンフィクションvol.8 「〝おいしい〟を支える」 (株)狩野ジャパン(長崎県大村市)
2018年10月発刊『フィランソスタイル 23号』掲載
水にこだわり抜いて辿りついた
FFCテクノロジーに驚嘆
ラーメンに蕎麦にうどんに、そうめんにスパゲティに焼きそばに――
日本人ほど麺好きな人種はいないのではないか。
ご当地名物の麺も多い。各地のご当地ラーメンを筆頭に、盛岡の冷麺、山梨のほうとう、名古屋のきしめん、香川の讃岐うどん、沖縄のソーキそばと、まさに百花繚乱と言っていい。そしてもちろん、ここ長崎の「皿うどん」と「ちゃんぽん」も外すことができない。
地下水の質を安定させるために
長崎と言えば、やっぱり皿うどんにちゃんぽんだよな――。そんなことを考えながら長崎空港の到着ロビーから一歩外に出ると、夏の暑い空気が束になって押し寄せてきた。
今回訪れた『(株)狩野ジャパン』は長崎県大村市に本社を置き、皿うどんやちゃんぽん麺をはじめ、さまざまな麺を製造している会社だ。代表取締役の狩野喜治さんにお話を伺った。
麺づくりには小麦粉と油、そしてそれ以上に質のいい水が必要不可欠だ。水の質は麺の味や食感、ツヤといったすべての要素を大きく左右する。
いかにして〝いい水〟を、常に〝安定供給〟できるか。それが麺づくりの最重要ポイントだと考えていた狩野さんは、何よりも「水」にこだわり続けてきた。かつては外国製の浄水機械を使っていたが、浄水能力への不満やコストの高さ、コストに見合わない故障の多さといった問題点が多く、納得できる水を得られなかったという。
あれこれ試してはやっぱりうまくいかない、そんな繰り返しのなかで出会ったのがFFCだった。ふとした縁でFFCの存在を知った狩野さんは、試行錯誤のひとつとしてFFCセラミックスを導入、工場や事務所など事業所で使うすべての水をFFCウォーターに変えた。
「今だから言うけれど、正直、最初は半信半疑。あまり期待していなかったんですよ」と笑う狩野社長だが、FFCを導入して半年後、工場で使用する水の質が変わり始めていることに気づいて驚愕することになる。狩野さんいわく「水が安定してきた」というのだ。
狩野ジャパンでは社屋や工場で使用するすべての水に地下水を使用している。一般的に「地下水=いい水」というイメージがある。だが実際には、私たちが想像している以上に水質が変動しやすい面もあると狩野さんは言う。場所にもよるが、降水量などの天候や季節、近隣の開発や工事といった外的要因によって水質に影響が出ることがあるのだ。
「麺づくりではその日の天候によって、小麦粉に加える水や麺を蒸す際に使用する水の量、温度を微調整しています。そうすることですべて同じ味や品質の商品生産が可能になる。でも使っている水そのものの質が日によって違うとその調整が難しく、商品の品質にバラつきが出てしまうんです」
麺づくりに限らず製造業においては、質の高い製品をつくる技術だけでなく、その品質を常にベストの状態のまま維持することが大きな課題なのである。
だからこそ狩野さんは水にこだわってきたのだ。
そしてFFCを導入後、ある変化が起こる。
「言うなれば、品質に“ブレ”がなくなったんです。従業員の誰よりも先に私が気づきました、『ああ、これは水が変わったからだ。常に質の高い水を使えるようになったからだ』って。私自身、それだけ水には敏感になっていたんですね」
コンビニから居酒屋まで幅広く提供
そのうれしい変化は、当然ながら消費者の声にも大きく反映されていく。おいしい麺でもたくさん食べると胃もたれが気になるという経験があるだろう。油でパリッと揚げる皿うどんならばなおさらだ。狩野ジャパンでもいかに油っぽさを抑えるかという課題には苦心していたという。
だがFFCを導入して以降、『狩野ジャパンの皿うどんは、油っぽさがなくておいしい』『胃にもたれないから、いくらでも食べられる』といった声が届くようになったのだ。
高い品質の製品を安定して提供できる――。こうした評判にいちばん敏感なのは、製品と消費者をつなぐ流通業界だろう。狩野ジャパンの〝おいしくて胃もたれしない麺〟が、地元・長崎や九州エリアだけでなく全国展開している大手流通業者からも注目されるのは至極当然だと言える。事実、現在では全国のコンビニエンスストアやスーパーから居酒屋チェーンまで、その製品は幅広く提供されている。
例えば近所のコンビニの冷蔵棚に並ぶ「パリパリ麺サラダ」など、いわゆる「コンビニ麺」の数々。食べたことがある人も多いはずだ。
実は、狩野ジャパンの製品はこうした数多くのコンビニ麺にも採用されている。
私たちがそれと気づかないところにも、FFCの活用製品が幅広く使われているのだ。あなたがよく行くコンビニにある麺も“FFCの活用麺”かもしれない。
手軽さだけでなく麺そのもののおいしさが魅力のコンビニ麺だが、その人気の陰に“FFCテクノロジーあり”なのである。
水が変わればすべてが変わる
品質だけでなく職場環境も大きく改善
掃除がラクに――環境面にもプラスが
白衣に白帽、マスクを身に着けると、狩野さんに工場内の皿うどんの製造ラインを案内してもらった。
滑って転倒しないよう足元に細心の注意を払いながら――などと考えていたのだが、どうも様子が違う。思った以上に工場の床が滑らないのだ。製造過程で1日約2.5トンもの油を使用すると聞いたため、床も製造機械も油でベタベタだろうという勝手な想像はいい意味で裏切られた。これもFFC導入後の変化のひとつだと狩野さんは言う。
「ウチの工場、キレイでしょ? FFCにしてから工場の掃除が本当にラクになったんです。もちろん1日稼働すれば大量の油汚れが出ますよ。これまではブラシと洗剤でゴシゴシ洗っていました。時間もかかるし従業員の負担も大きいけれど仕方なかった。それが今ではFFCウォーターでザザーッと洗い流すだけ。それで油汚れもすっきりキレイになります」
なるほど、床はもちろんどの機械を見ても新品のようにピカピカだ。水洗いだけでこの状態が保てていることに驚いた。
さらにもうひとつ感じたのが臭いだ。マスクをしていてもわかる、油特有の胸にこびりつくようなこもった臭いをまったく感じないのだ。マスクを外して息を吸い込んだら、食欲をそそるおいしそうな“匂い”に誘われて、思わず「グゥ」とお腹の虫が鳴いてしまった。
狩野ジャパンでは、FFCの導入によって麺の品質向上だけでなく、製造工場の衛生環境の改善や従業員の負担減までがもたらされていたのである。
排水処理施設に魚が泳ぐ奇跡の光景
常識的に考えて、工場のなかでも特に汚れている水は、製造ラインで使用されたあとで「排出された水」だろう。
だが――。狩野ジャパンの工場を見て回った最後に、驚愕の光景に遭遇した。
工場の裏手にあって、毎日200トン以上もの工場排水を処理しているという排水処理施設の水槽をのぞくと、なんと、色鮮やかな魚たちが優雅に泳いでいるではないか。悪臭がしないのは言うまでもない。
水槽にためられた水は、ひとめで透明度が高くきれいであることがわかる。水面に近づくと魚たちが物怖じせずに寄ってくる。
「人を怖がらずに寄ってくるのは、魚が水にストレスを感じていない証拠です。水質が悪くてストレスを感じると警戒心も高まってしまうようですね」
生き物は質の高い水、環境にやさしい水、命を育む水をちゃんと知っているのだ。ここで処理された後の排水は大村湾に注がれていくのだが、その河口部の自然環境にも改善の兆しが表れているという。
いいものは、必ず支持され、残っていく
狩野さんの水へのこだわりと取り組みの成果を知って、数多くの企業関係者が工場見学に訪れるという。そのとき、社長はこの排水処理施設を隠すことなく公開している。
「こんな素晴らしい技術は、もっともっと広めなきゃもったいない。だから周囲の同業の人にも、違う業種の人にもみんなに薦めているんです。迷っている人には『大丈夫、私が責任を取るから』って(笑)。自分の目で成果を確かめてますから。それだけ自信があるんですよ、FFCに」
FFCに出会えたことに心から感謝をし、この素晴らしい技術を誇りに思っていると語る狩野さん。
「『正義は必ず勝つ』って言うでしょ。それと同じで、本当にいい技術は必ず人々に支持されて残っていくんです。感謝と誇りを大切にして、赤塚グループの方々やフィランソ会員の皆さんとともに、これからもFFCを広げていきたいですね」
――取材を終えたその足で羽田行きの飛行機に飛び乗り、帰京したのは深夜に近かった。
夜食を買おうと立ち寄ったコンビニで気づく。たしか、狩野ジャパンはこのコンビニにも麺を提供しているはずだった。
「正義は勝つ」という狩野さんの力強い言葉が胸によみがえってくる。そして同時に「こんなところにもFFCが活かされている――」と、その広がりを実感して嬉しくなった。
株式会社 狩野ジャパン
〒856-0032 長崎県大村市東大村1-2376-6
http://karino-japan.com/
撮影/野呂英成 取材・文/柳沢敬法 写真提供/赤塚グループ