プロの誇りとFFCが
雨にも日照不足にも負けない
安定収穫を可能に
観測史上初、経験したことのない、想定外―こんな言葉が飛び交う近年の天候不順で大打撃を受けているのが農業だ。だが、FFCを活用して自然と向き合い、安定収穫を実現している人たちがいる。今回はその取り組みを追った。
FFCノンフィクションvol.4 「天候不順に挑む」
(鳥取県西伯郡大山町・岐阜県高山市)
2017年1月発刊『BOSCO 17号』掲載
FFCが土を、水を変える。
環境が変わるから、野菜が元気になる。
「野菜の値段が高くて」―昨年の秋以降、そんな主婦の方々のため息が、日本全国あちこちのスーパーマーケットで聞かれた。
北海道にまで台風が上陸し、各地で猛暑や少雨、打って変わっての大雨や記録的な日照不足に見舞われるなど、昨年の全国的な天候不順は農作物に甚大な被害をもたらした。そのあおりを受けて、野菜の価格が高騰したのだ。
野菜の種類によっては例年の倍以上という高値が付き、家庭の食卓のみならず、学校給食でも献立変更を余儀なくされたというケースもあった。
こうした天候不順という自然がもたらすリスクに常にさらされているのが農業経営だ。デリケートな農作物は甚大なダメージを受け、場合によっては全滅という恐れさえある。とはいえ農業経営をする以上、このリスクとの付き合いは避けられないのが実情だ。
しかし周囲が収穫量不足に悩まされているなか、安定した収穫、安定した品質を維持している農業経営者も存在する。そこには、どのような秘密があるのだろうか。
周囲が軒並み不作のなか
安定収穫ができる理由
訪れたのは鳥取県西伯郡大山町。山陰の名峰・大山を臨む広大な畑で、農業を営んでいるフィランソ会員・清水 覚さんだ。
昨年の全国的な野菜の収穫不良は鳥取県も例外ではなかった。夏は猛暑で雨がほとんど降らずに地面が濡れる間がなく、秋になると一転して長雨続きで、今度は地面が乾く間がない。元々山陰地方は梅雨より秋雨のほうが多いのだが、昨年の秋は日照不足も極端で、さらには台風の被害もあった。
雨続きで定植が遅れたり土の養分が流出する、日照不足で光合成ができず作物の育成が進まないというまさにダブルパンチだった。
ところが2.5ヘクタール超という耕作地で大根や白菜、ニンジンなどを栽培する清水さんの畑では、厳しい気象条件下でもほぼ通常の収量、品質を維持できている。
「近隣の農家さんのなかにはほとんど出荷できなかったところもあったようです。おかげで地域のお祭り用など、今までにないところからも注文が。他の農家さんが出荷できないなか、地域の役に立てたのは嬉しいですね」(清水さん)
その安定感を支えているのが土壌中の水をFFCウォーターに改質して微生物を活性化させる土壌改質活性培土『FFCエース』だ。
雨を味方に。
悪天候でこそ力を発揮するFFC技術
清水さんがFFCを導入したのは2006年から。
「畑には1反(約10アール)あたり8袋(160kg)の『FFCエース』を入れています。雨水もFFCウォーターにしてくれる、つまり『FFCエース』は雨を味方にできる技術なんです。だから気候条件が悪いときほど力を発揮してくれるんですね。昨年も長雨の影響で、白菜の生育が遅れましたが、結果的には品質も量も計画どおりでした。資材代はかかっていますが、十分に元は取れています」
また作物にはパイロゲンの活用も欠かせないという。
さらには、同じ場所で同じ野菜を栽培し続ける“連作”による生育不良や天候不順のリスクを最小限に止めるための取り組みを常に欠かさないという清水さん。彼の元には、高い技術や経験に学ぼうと、多くの同業者が見学に訪れる。
「人が思い通りにできない天候によるリスクを回避するために何ができるかを常に考え、あれこれ工夫し、努力する。だって天候不順を不作の言い訳にしたくはありませんから。それが農業の“プロ”だと思うんです。そうした取り組みのなかで、FFCエースやパイロゲンには助けられていますね」
安定した出荷ができたことで、地元の方々の食卓を救う一助になった自負もあるという清水さん。天候に負けない安定収穫、安定品質の秘訣は、何よりもその高いプロ意識にあった。
「飛騨の小京都」と称される岐阜県高山市。この地でも昨年の天候不順に苦しんだ農家は多い。
標高650~850mという高地で夏秋トマト栽培を中心に農業を営む中野俊彦さんに聞くと、
「いちばん影響が大きかったのは9月の日照がほぼなかったこと。3日くらいしか晴れませんでしたから。8月は猛暑でほぼ雨が降らなかったのに、翌月は一転して曇天、多雨、日照不足。極端な気候の変化は野菜にとって甚大なダメージになるんです」
にもかかわらず、中野さんの農場では例年と変わらない収穫量と品質を維持しているという。
「“平均よりも高品質のものを、平均以上に収穫する”というのが私のポリシーですが、それを支えてくれるのがFFCの技術です」
FFCの技術がもたらす
土と野菜の“基礎体力”
なかでも中野さんが重要視しているのが土づくりだ。晩秋の雪が降る前と春になって雪が解けた後の年2回、FFCエースを施用。
「繰り返し撒くことで、根が張りやすい土壌環境ができ、定植後の苗の生長が促されるんです」
さらにFFC元始活水器も導入。ハウス内に巡らせたチューブを使って毎日の灌水を行っている。
また高地ゆえの悩みにトマト収穫の終盤頃に降りる秋の霜がある。気温が下がる日はハウスのなかにまで霜が降りるほどだが、FFCを活用することで霜に強くなり、出荷時期が延びているのだ。
「FFC技術が土とトマトに天候の変化に適応できる“基礎体力”をつけてくれているんですね。おかげで他の農家さんの出荷がない時期まで出荷できています」
とはいえ、そこはやはり標高の高い地。冬には特産のもち米加工品「花もち」を扱っているが、FFCの活用で、冬に栽培できる品目の模索を続けている。
実は中野さんは28歳の頃、家業の農業を継ぐために実家に戻ったという経歴を持つ。
「農業を始めた最初の年からFFCエースは導入していたのですが、投入量は今よりずっと少なかったんです。それでも収穫量が確保できていたんですね。ところが2年目に全国的な冷夏に見舞われて収穫量が大きく前年割れし、赤字になってしまった。そのときのショックは大きかったですね」
天候に左右される農業の厳しさを痛切に感じ、栽培技術から資材活用まですべてをレベルアップする必要があると思い知ったという。
またFFCエースもただ撒くだけではなく、投入の季節やタイミング、量などを徹底的に研究し、収量を5~10%も増加させた。
そうするうちに中野さんのなかに農業をビジネスとして考えるという視点が生まれてきた。
「初めはトマトをつくることが、ただ楽しかった。でもそこに経営や労務管理という観点が加わることで、この仕事の楽しさがさらによくわかってきたんです。」
仕事のあり方や向き合い方、またその仕事に対するイメージなどは時代によって変わってくる。農業も同じで、かつて『キツイ・汚い・危険』など揶揄されていた頃とは大きく変わってきているのだ。
だから中野さんは自らを農家ではなく“農業経営者”と呼ぶ。
「農業はものづくりの楽しさと、ビジネスとしてのおもしろさ、両方を兼ね備えた魅力ある仕事です。私が“経営者”としての取り組みを示すことで、若い世代や子どもたちに農業という仕事の奥深い魅力を感じてもらいたいですね」
そう語る姿に、農業経営者としての誇りと自信がうかがえた。
撮影/野呂英成 取材・文/柳沢敬法